農業とIT:農業における「記録」

2013年9月2日 一般社団法人千葉IT経営センター 理事 堀 明人
私自身が兼業農家であることも一つのきっかけに、「農業とIT」の分野に取り組み始めて4年が経過しました。この間、農作業履歴の記録用のスマートフォンアプリのプロデュースや、JGAP指導員資格の取得、千葉県地域IT化推進協議会での研究活動などを通じて、農業経営に役立つITのあり方を追い続けてまいりました。ここでは、これまでの取り組みで学んだことをもとに、農業における「記録」について整理してみたいと思います。
◆農業で大切なこと
農家の先輩から、農業において大切なことは「観察」だと学びました。実際、私自身の日々の農作業も「観察」の連続です。発芽の状態、果実肥大の様子、葉の色など、様々な情報を「観察」を通じて入手し、知識・経験と照らし合わせて判断を行います。
いつ頃に種を播けばよいか、いつ頃に収穫できるかなどを示した標準的な作型がある場合もありますが、土壌の栄養状態、土壌の水分保持力、風の流れや強さ、もちろん、気温、湿度、降水量などは、圃場によって千差万別です。標準作型を参考にしつつも、農業者は常に、今どうなっているかを「観察」して把握することが欠かせません。農業は自然環境との対話なのです。
◆農業における「記録」の意味
当たり前のことですが、春夏秋冬の四季というのは、一年に一度しか訪れません。農業者にとっても、季節の移ろいとその時々の「観察」は、一年に一度しか経験することができません。10年間農業をしても、四季はたったの10回しか経験できないわけです。農業においては、経験を積むといっても、なかなか時間がかかる部分が多くあるのです。
であるからこそ、農業では、経験を蓄積して未来に活かすために、それを「記録」しておくことが重要になります。人間の脳は忘れるようにできているそうです。「観察」した結果もどんどん忘れてしまう。「記録」は「観察」の結果をその時点の事実として固定化し、自分自身の「財産」とすることができます。「記録」は未来の自分への投資というわけです。
◆「記録」はデジタルデータで
「記録」は、農業者の日々の判断に際して、重要な意思決定材料の一つとなります。過去の事実を振り返ることができ、現在置かれている状況と対比することで、未来を予測しやすくなる。そのためには、必要な情報をすぐに確認できるなど、「記録」は使いやすくなければなりません。
「記録」の仕方には、手帳やノートへの手書きという方法もあります。手書きの良さは、なんでも自由に書き留めることができる点で、それ故に、「記憶」しやすくなるという利点がありますが、必要な情報をすぐに確認するなどの使い勝手は良いとは言えません。やはり、「記録」はデジタルデータとして残すことをおススメします。
「表1.」には、デジタルデータの利点と農業での活かし方をまとめましたのでご覧ください。
表1.デジタルデータの利点と農業での活かし方
デジタルデータの利点 デジタルデータの農業での活かし方(例)
1.検索が容易 過去の出来事(播種日や開花日)を振り返って確認できる
2.多くの情報を処理できる 収穫量や作業量など、過去からの累計や平均をすぐに把握できる
3.省スペースである スマートフォンなどで圃場や外出先にも持ち歩ける
4.加工編集しやすい 計画表や栽培履歴帳票にデータを二次利用できる
5.共有がしやすい 作業結果や観察内容を農業仲間と共有することができる
◆ちょっとした「記録」のコツ
日出から日没まで、時間に追われることが多い農業での「記録」のコツをまとめてみました。
(1)「記録」するものを選ぶ
やみくもに、なんでも「記録」するのはやめましょう。後になって「記録」したデータを活かすことを考えれば、「記録」は継続することが最も大事です。毎日記録していたのに、理由があってデータがなかったりすると、後になって集計がしにくく、結果として活用できないデータとなってしまうこともあります。毎日が忙しい農業者ですから、持続可能な範囲で、自分がコレと決めた情報を継続して「記録」するようにしてください。
例) 収穫量、作業時間、作業日付、農薬や肥料の使用量
(2)できるだけ圃場で「記録」する
「記録」は、農作業の都度、圃場で「記録」することが大原則です。自宅に帰ってからはどうしても忘れてしまいますので、作業と作業の合間、休憩時間、帰宅する前に軽トラの中で、など、圃場で都合の良いタイミングを決めて「記録」しましょう。圃場であれば、数量などの定量的な「記録」とあわせて、「観察」結果も写真や文章で「記録」することもできますね。
以上、農業における「記録」のあり方をまとめてみました。
スマートフォンが登場し、圃場で農作業記録をとるのがぐんと簡単になりました。「畑らく日記(http://www.hata-nikki.jp/)」という良いツールもありますので、まだ、「記録」を始めていない方は、未来のご自身のために、今日からスタートしてはいかがですか?
以上
(PDFファイル)